楠は、神社においてはご神木として信仰の対象になっている例もあるくらい神秘性や威厳を帯びつつ、氏子たちや地域の人々の心の拠りどころのような存在となっています。
私たちの玄関にある楠も、時に私たちの道しるべとなり、また見守ってきてくれたシンボルツリーのような役割をしてくれています。

楠には巨木が多く、ある調査によると日本全国の巨木トップ10のうち、8本が楠だそうです。また樹齢も長く、このトップ10に入っているものはいずれも300年から3,000年という気が遠くなるような歳月を経ています。また他の樹木に比べて、成長が早いことも特徴のひとつです。
私たちになぞらえると、決して早くなくてもよいのですが、絶え間ないチャレンジや努力により、このぎゃらりいたねからを大きくしっかりと育てていき、永く受け継がれるようなものにしていきたい。この楠を見るたびに、そうした想いがわき、いつも目指すべきところを教えられているような気がします。

私たちの楠の、こんもりと豊かな葉をつけた堂々とした樹形は、曲線と直線がうまく融合した建物のデザインと調和しています。常緑で厚みのある葉がつく枝振りは火災に強く、また防音効果も期待できるので楠は街路樹に選ばれることもあります。ただ外見だけでなく、私たちの楠は街の喧騒から私たちを守ってくれているのだと思います。
また楠には樟脳、英語で言うとcamphor(カンフル)が含まれ、これを精油したものはアロマテラピーで使用されて鎮静作用と高揚作用の両方を発揮すると言われます。「カンフル注射を打つ」なんて表現もありますよね。楠がそばにいると思うだけで守られたり、叱咤されている気にもなります。

最後に。楠は10月から11月にかけて黒っぽい実をつけます。自然のままだとこれを鳥が食べて、運んで行ってくれます。人が手助けするとなると、果肉を取り除くと中に種がありますので、これをよく洗ってから植えていきます。
そう、楠を増やす方法は種まき、つまり「たねから」です。私たちのシンボルツリーである楠は、私たちが大切にしているキーワードをも体現してくれているのです。これからもこの楠と共に、わたしたちも成長を続けたいと思います。
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