緒方直青インタビュー
動物や植物のまっすぐな有りようにあこがれて
先生がいつも描きたいテーマ、表現したい想いとはなんでしょうか?
自然や生き物、特に動物や植物の形や有りようの潔さに対する私のあこがれにも似た思いですね。そこから得られるインスピレーションをもとに、私自身の想像のおもむくままに描いています。
私が本格的に絵を描くことを志したのは20歳代後半でしたが、動物と植物というモチーフはその頃からずっと追いかけ続けています。
動物や植物のどんなところにあこがれますか?
人間は生きていく中で今は足りているのに、もっともっと欲しがる、限りなく欲しがる生き物だと思います。それと比べると、動物はありのまま生きるように生きている。ただ生きて死ぬ、という潔さがあります。
それは植物も同じですね。
そうですね。植物は酸素を作って私たちのための最初の母体まで用意してくれました。私たちは母を食べてもいます。植物から受けている恩恵は普段あまり意識しないかも知れませんが、私はその感謝の気持ちを何とか表したいと思っています。
確かに私たちは意識しなさ過ぎかも知れません。
意識しなくても良いのです。でもあの優しさ美しさは感じていたい。彼らのひとつひとつの形は、とてつもない長い時間と必然性、そして偶然から生まれたユニークなデザインといっていいと思います。そのデザインには常に明日があり、時間や季節の移ろいの中で変化していく。今が最終結果でも完成でもない。ずっと変化し続ける。そうしたことにとても心をひかれます。
本当に動物や植物の存在は大きくて、母のようですね。
そして、人間という生き物の貧しさや卑しさが引き起こす現実はすべて学びの種だと感じます。私自身の奥にもある卑小さを見つめ、私たちはどうしていつまでもこうなのか?と考えています。動物や植物の姿勢を見習って、自意識や自我、作為を消そうと努力したりもしました。けれども私は人間でどうしようもない。愚か者の現実を認め、隣人の生物や無生物、母なる地球や宇宙への賛歌を、ただ遊ぶように歌うように描き続けていきたいと思います。
お話をどうもありがとうございました。